技術士(環境部門)の紹介

技術士

この記事では、技術士の環境部門について、少し踏み込んでみます。
技術士の人数について書いた記事でもお示ししたように、環境部門の技術士は、技術士全体のわずか1.8%を占める少数派です。

環境部門ができた背景・経緯

環境部門の技術士が少ない理由については、まずは建設部門の技術士が圧倒的に多いという理由があるのですが、いったんそれは置いておきます。それ以外の理由を挙げるとすると、環境部門の設置が比較的最近だったということが挙げられると思います。

公益社団法人日本技術士会ウェブサイトにある統計情報を見ると、第1回の技術士試験は1958年度(昭和33年度)に実施されたようです。これに対して、環境部門は1994年度(平成6年度)に新設された部門になります。設置されてから26年ほど経ちますが、技術士自体が62年前からいることを考えると、歴史としてはまだ浅いですね。

環境部門が設置された1990年代前半は、国際的に地球環境問題への関心や取組が進んだ時期です。
大きなイベントだと、1992年にブラジルのリオデジャネイロで 「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)が開催されました。日本国内でも、環境基本法の公布・施行(1992年)、環境基本計画の制定(1994年)など、環境関連の施策が進んだ時期にあたります。

このような流れの中で、技術士の中にも環境の横断的な部門を設置しようという流れがあったようです。

環境部門の科目

環境部門は二次試験受験時の選択により、以下の4科目に分けられます。

  • 環境保全計画
  • 環境測定
  • 自然環境保全
  • 環境影響計画

各科目の概要は以下のように説明されています。

環境保全計画
環境の現状の解析及び将来変化の予測並びにこれらの評価、環境情報の収集、整理、分析及び表示その他の環境の保全及びその持続可能な利用に係る計画に関する事項(専ら一の技術部門に関するものを除く。)

環境測定
環境測定計画、環境測定分析、環境監視並びに測定値の解析及び評価に関する事項

自然環境保全
生態系及び風景並びにこれらを構成する野生動植物、地形、水その他の自然の保護、再生・修復、生物多様性保全・外来種対策に関する事項自然教育、自然に親しむ利用及びそのための施設整備に関する事項(専ら一の技術部門に関するものを除く。)

環境影響評価
事業の計画及び実施が環境に及ぼす影響の調査、予測及び評価並びに環境保全の措置の検討及び評価に関する事項(専ら一の技術部門に関するものを除く。)

※「専ら一の技術部門に関するもの」とは、他の技術部門における環境関連科目(建設部門/建設環境、森林部門/森林環境 等)のことを指します。

公益社団法人日本技術士会 第二次試験 技術部門/選択科目(https://www.engineer.or.jp/c_topics/002/attached/attach_2255_1.pdf)より引用・2021年6月20日アクセス

「環境測定」「自然環境保全」「環境影響計画」は、科目名や説明文を読むと業務内容もある程度見えてくると思うのですが、「環境保全計画」って獏としていて掴みどころがないと感じています。こんなことを書くと怒られてしまうかもしれませんが、ほかの3科目以外の「その他環境」のようなイメージです。

環境部門に関する数値データ

最後に、環境部門に関するデータを数値で見てみましょう。

日本技術士会ウェブサイトに公開されている統計情報から、2010年度から2020年度までの技術士第二次試験の環境部門の科目別の試験結果を整理したものです。

申込者数
(人)
受験者数
(人)
合格者数
(人)
環境部門全体に占める
合格者数(%)
合格率
(%)
環境保全計画2,5682,03332732.816.1
環境測定1,9711,52321321.314.0
自然環境保全2,4401,93430530.615.8
環境影響評価82361815315.324.8
部門合計7,8026,10899816.3
技術士全体349,825272,49437,04813.6

直近11年の試験では、技術士全体に占める環境部門の合格者の割合は約2.7%です。
合格率は、技術士全体の13.6%に対して16.3%とやや高いですね。

環境部門の各科目を見てみると、受験者・合格者とも環境保全計画と自然環境保全が多く環境影響評価が少なくなっています

一方、合格率については、環境部門の中では環境測定がやや低く環境影響評価が高くなっています。環境測定は低いといっても、技術士全体の平均よりも若干高い合格率になっています。

最後に

いかがだったでしょうか?

今回は技術士の環境部門について少し踏み込んだ記事を書いてみました。少しでも技術士や環境部門について、お伝えできるものがあったのであれば嬉しいです。

なお、技術士試験の受験にあたり技術部門や科目を選択する際は、ご自身が専門とする分野について、過去問なども確認した上で決定することになると思います。今回整理した合格者数や合格率は、この部門・科目だと受かりやすい・受かりにくいということをお伝えしたかった訳ではありませんので、ご留意ください。

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