以前、技術士の紹介記事を書きました。
今回は追加情報として、技術士の人数やその内訳を見ていきたいと思います。
ただの数字だと侮ることなかれ。部門別の人数を見ることで、技術士がどういう資格なのかが、より見えてきます。
技術士の人数
公益社団法人日本技術士会によると、2020年3月末時点で登録されている技術士の人数は94,118人とのことです。女性はそのうちの1,904人なので、全体のわずか2%程度になりますね。
女性の割合については、理系の女性はまだ少ない印象ですし、(詳細は後述しますが)土木系の女性はさらに少なくなると思うので、わりと順当な感じでしょうか。
(参考)他の資格保有者の人数
94,118人という人数だけ出されてもイメージしづらいと思うので、日本の代表的な資格保有者の人数と比較してみましょう。
人数(人) | 時期 | 出典 | |
医師 | 327,210 | 2018年12月末 | 厚生労働省ウェブサイト(平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況) |
弁護士 | 42,164 | 2020年3月末 | 日本弁護士連合会ウェブサイト |
公認会計士 | 31,784 | 2020年6月末 | 日本公認会計士協会ウェブサイト |
博士 | 601,590 | 1957年4月~2019年3月までの授与数 | 文部科学省ウェブサイト(平成30年度博士・修士・専門職学位の学位授与状況) |
すみません。かえってよく分からなくなってしまったかもしれません。
お医者さんが多いのは納得ですが、個人的には弁護士や公認会計士が思っていたよりも少なかった感じです。関係のない感想ですが。
技術士の部門別の人数内訳
技術士は21の部門に分かれていますが、部門ごとの人数を見てみるとどうなるのでしょうか?
これも日本技術士会のウェブサイトに情報があったので載せてみます。2020年3月末時点のデータです。
No. | 部門 | 人数(人) | 割合(%) | 割合積み上げ(%) |
1 | 建設 | 51,675 | 45.19 | 45.19 |
2 | 総合技術監理 | 15,621 | 13.66 | 58.86 |
3 | 上下水道 | 7,350 | 6.43 | 65.28 |
4 | 機械 | 6,173 | 5.40 | 70.68 |
5 | 電気電子 | 6,041 | 5.28 | 75.97 |
6 | 農業 | 5,154 | 4.51 | 80.47 |
7 | 応用理学 | 4,567 | 3.99 | 84.47 |
8 | 衛生工学 | 3,285 | 2.87 | 87.34 |
9 | 情報工学 | 2,273 | 1.99 | 89.33 |
10 | 環境 | 2,107 | 1.84 | 91.17 |
11 | 経営工学 | 2,017 | 1.76 | 92.94 |
12 | 化学 | 1,687 | 1.48 | 94.41 |
13 | 森林 | 1,535 | 1.34 | 95.75 |
14 | 金属 | 1,505 | 1.32 | 97.07 |
15 | 繊維 | 798 | 0.70 | 97.77 |
16 | 水産 | 763 | 0.67 | 98.43 |
17 | 原子力・放射線 | 536 | 0.47 | 98.90 |
18 | 資源工学 | 486 | 0.43 | 99.33 |
19 | 生物工学 | 316 | 0.28 | 99.60 |
20 | 航空・宇宙 | 238 | 0.21 | 99.81 |
21 | 船舶・海洋 | 214 | 0.19 | 100 |
ちなみに、部門の人数を合計しても技術士全体の人数である94,118人とは数が合いません。
これは一人で複数部門の技術士資格を持っている人がいるためです。
グラフにすると以下のようになります。
グラフだと顕著ですが、建設部門が45%と圧倒的に多く、技術士全体の半分近くを占めています。
理由は、建設コンサルタント登録制度があるために、名称独占資格である技術士が、土木の分野では実質的な業務独占資格になっていることに由来するのだと思います。
建設コンサルタント登録制度について
1.建設コンサルタント登録制度とは
国土交通省中部地方整備局建政部建設産業課ウェブサイト(https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/info/kanren/consultant/touroku.htm)より引用・2021年6月15日アクセス
主に土木(建築コンサルタントは含まない。)に関する21の登録部門の全部又は一部について建設コンサルタントを営む者が、一定の要件を満たした場合に、国土交通大臣の登録が受けられる制度です。
なお、登録の有無に関わらず、建設コンサルタントの営業は自由に行うことができます。
土木分野のコンサルタント(建設コンサルタント)業を営む場合に、建設コンサルタント登録制度というものがあります。登録するための一定の要件には、技術士を設置していることも含まれます。建設コンサルタント登録部門は21に分かれていて、各登録部門に応じた部門・科目の技術士を設置する必要があります。建設コンサルタント登録部門の21部門のうち、12部門が建設部門に該当するようです。建設部門の技術士が多いのも納得できます。
引用文にあるように、建設コンサルタント登録制度に登録しなくとも建設コンサルタント業はできるようですが、国や自治体が発注する公共事業は基本的に建設コンサルタント登録を行っているところに発注されるようなので、実質的な業務独占資格と言われているということですね。
最後に
いかがだったでしょうか?
技術士は21部門にも分かれていて科学技術全般をカバーしている資格のはずなのに、実質的には土木分野で重宝されていることが分かっていただけたかと思います。
私が持つ環境部門は技術士全体の2%程度しかおらず、部門ごとの偏りが大き過ぎるという印象です。技術士全体のプレゼンス向上を目指したい!と思う次第です。
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