日本技術士会のウェブサイトで以下の情報が公開されていました。
技術士が各々のCPD活動を登録できるようになったようです。
CPDとは
CPDとはContinuing Professional Developmentの略称です。
日本語では「継続教育」とか「継続研鑽」などと略されます。
技術者が技術力を研さんして高めるという概念。技術士をはじめとした建設関係の各資格を認定する団体が、相次いでCPDの取り組みを推奨している。研さんに要した時間を単位に変換し、一定期間に一定単位を求める例が一般的だ。入札参加要件などに求める発注機関も出始めた。
日経XTECH(https://xtech.nikkei.com/kn/article/const/words/20061102/500704/)より引用(2021年9月11日アクセス)
上の説明にあるように、技術全般というよりは、特に建設系の分野で一般的な概念なようですね。
CPDの認定団体によって違いはあるようですが、論文執筆やセミナー出席などを通じて、ちゃんと専門分野の能力を維持していることを示すために使われるもののようです。これらの活動1時間につき、おおよそ1CPD時間が付与されて、どれだけCPDに取り組んでいるかが、合計値によって客観的に示せるようになっているようですね。
技術士CPD制度の概要
技術士CPD制度の概要について、詳細は上記のリンクを見ていただくのがよいと思いますが、そこで公表されている内容をかみ砕いたのが以下になります。要するに、技術士の中でも継続して専門性を維持・高度化している技術士が分かるようにします、というものですね。
1.技術士CPD活動実績時間の技術士登録簿への記載
希望する技術士は、過去5年度までのCPD活動実績を技術士登録簿に記載できます。
2.技術士CPD活動実績名簿の作成及び公表
前年度のCPD活動登録時間が一定以上あれば、日本技術士会のホームページ上に氏名等を公表できます。
- 20CPD時間以上、50CPD時間未満の場合→「基準CPD時間達成者」として公表
- 50CPD時間以上の場合→「推奨CPD時間達成者」として公表
3.「技術士(CPD認定)」の認定
申請前の過去5年度間の実績登録で以下の3点を満たす技術士は、申請により技術士(CPD認定)に認定されます。認定証が発行されるとともに、希望により氏名等を日本技術士会のホームページに掲載できます。
- 合計250CPD時間の実績
- そのうち5CPD時間以上の技術者倫理の実績
- 各年度が少なくとも20CPD時間の実績
※経過措置:2024年3月末までの申請については直近の過去2年度間連続して50CPD時間以上を達成していればOK。また、2021年度以前の実績登録では技術者倫理に関する実績は不要。
4.技術士CPD活動実績証明書の発行
1.で登録したCPD活動実績時間を証明する「技術士CPD活動実績証明書」を発行できます。
技術士CPD活動実績管理について思うこと
悲しいことに、技術士は非常にマイナーな資格です。さらに、特定分野を除いて、有効に活用されているとは言えないと感じています。
そんな中、技術士の社会的な信用度を高めて活用を促進するため、技術士に更新制度を導入するか否かという議論があります。現時点で更新制度は導入されていませんが、今回のCPD活動実績管理は更新制度導入に向けた布石だと受け取れます。
「技術士(CPD認定)」の認定に必要なCPD時間はAPECエンジニアやIPEA国際エンジニアで求められるものと同じなので、グローバルな視点での評価や整合性も意識されていますね。
ちなみに「技術士CPDガイドライン」では、CPD時間の目安を以下のように設定しています。
- 資質能力の維持のために必要なCPD時間・・・20CPD時間/年
- 高度なエンジニアとして必要なCPD時間・・・50CPD時間/年
20CPD時間/年未満では能力が維持できないということなので、更新制度が導入される場合は、まず20CPD時間/年が要件になりそうですね。
技術士が実質的な業務独占資格となっている建設分野では、入札時に一定程度のCPD活動実績が求められる場合も出てきていると聞きます。今後、20CPD時間/年 や50CPD時間/年が、より明確な基準になる可能性もありますね。
個人的には、技術士としての能力・専門性を担保するため、という意味では、更新制度はあった方がよいと考えています。
とは言え、医師や弁護士などの資格も日本では更新制度がないんですよね。教員資格には更新制度があるのに。
これらの資格って、取って終わりの資格ではないと思うので、資格を利用して仕事をし続けようと考える以上、CPD活動(というか、継続して学ぶこと)は必要になってくるものですよね。何十年も前に医師免許を取得したけど、免許を取得してから医業には携わってません、という人に診察とかはしてもらいたくないですし…。
ただ、それをCPDという枠組みで評価する場合、何をCPD活動として認めるかが難しいと思っています。
CPD認定機関の情報を見てみると、CPD活動として認められるものはいろいろあるようですが、一般的なサラリーマンは、セミナーへの参加とか、会社の研修への参加などがメインになるような気がします。これらの活動ももちろんありますが、専門性の維持・向上という意味では、関連する文献を読んだり、資格などの勉強をしたり、何より実務を通じて学ぶという部分がウェイトとしては大きいかなというのが実感としてはあります(前二者についてはCPD活動として認められるケースもあるようですが)。
この、技術士CPD活動実績管理、ひいては技術士の更新制度というのが、結果として、単に所定のCPD時間を満たすためだけの仕組みにはなってほしくないなと思います。
最後に
いかがだったでしょうか?
このことをきっかけに技術士という資格・制度がどう動いていくのかは分かりませんが、自分の分野の専門性は保てるよう、引き続き精進したいと思います。
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